致死量カカオ

あいつが断る理由だって分かっているけど。だけどどうしても納得出来ないのも事実だ。


「あんたが自分からお昼誘うなんて珍しいよね」

「……会ったからな」


たまたま会わなかったらそんなこといいださねえよ。


俺の後に続いてジュースを飲みながら呟く裕子に返事をすると「あんたが誘うのが珍しいんだって」と付け足したように言葉を発した。


「今までの彼女だったら彼女の方から一緒にお昼をーってなるか、何も言わなかったら食べないじゃない。

同じクラスの彼女の時にそんなことした?してないでしょー。豊海ちゃんだから、誘ったんでしょ?鈍感ねー自分の気持ちに」


言われてみれば……そうかもしれないな。


裕子の言葉に前の彼女を思い出してみると、そういえばこうやって昼前に顔を合わせたからって俺は誘うことなんかしなかった気がする。


何で、誘ったんだろう。

言われてみるとその理由が自分で見当たらない。


一緒に食べようかとか、そんなことを考えるよりも前に口から出ていた言葉だから。


お昼は彼女と一緒に食べるものだ、なんて考えだって別にある訳じゃないのに。


むしろ別に付き合っているんだから望まれない限り四六時中一緒に過ごす事だってないと思っていた。
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