致死量カカオ
「で、はいノート」
「うわーサンキュー助かる!」
さっきまで昭平が丸めていたノートを千恵子が思い出したように昭平から取り上げて私に差し出した。
二人と同じクラスで本当に良かった。しかも二人とも私より頭がいいんだから余計に!
ぎゅうっとノートを抱きしめて鞄の中に入れる。
自分のノートよりも分かりやすい二人のノート。このノートがあればもうすぐある期末テストの点数も赤点は免れそうだ。
お母さんの角もきっと生えないだろう。
「昭平、チョコもいっこ頂戴」
「はあ?やめとけよお前」
「だーいじょうぶだって。お腹空いたし」
しゃーねーなーとぶつくさいいながらポケットから同じチョコレートを1つ取り出して私の出した手のひらにぽんっと銀色が光ながら落ちてきた。
そそくさとチョコレートを取り出すと、また口の中がふわりと甘さで包まれる。
ああ、おいしい。
甘い物食べると幸せになれるよね。
「大丈夫豊海—?」
「だーいじょうぶだーいじょうぶ」
手をぶんぶんと上下に振って心配そうな千恵子にへらへらと笑った。
告白したから、まあスッキリしたのかも知れない。
チョコレート2つ食べたくらいじゃなんともないんだし。
まあ理系と普通だ、今後会うこともないだろう。
少しもったいないなとか、悲しいなとか、そんな思いはこのままいつものように消えてなくなるんだ。
でないと困るしね。