致死量カカオ
私それこそ追試の危険性もあるほどのバカだけど、だけどそこら辺の知識はあるんだよ。
雑誌だって漫画だって読むし、恋愛特集だったら穴が開くほど読み尽くすんだから。
そこら辺の知識だけは豊富なんだから。
「豊海?」
名前を呼ばれて嬉しかった。それだけで死を感じる程には幸せだった。感じたくないけどだけど幸せだった。
死と幸せが隣り合わせなんだから仕方ないけど。
だけどそんなのきっと高城にとっては何でもないことなんだ。証拠に裕子さんのことだってそう呼んでいるんだから。
今までの彼女だってきっと名前で呼んでて。今は並んで、いや私が一歩後ろを歩いて高城を意識しないようにしているけど、だけど今までの彼女はきっと隣に並んで手を繋いで歩いていたんだ。
肩に手を回しているのを見たことがあるんだから。
触れて触って抱きしめて。
シャツを抱きしめているだけで過呼吸に陥る私とはきっと違うんだ。
「おい、豊海?生きてるか?」
死んでたまるか。
そう思ったけれど顔を上げることは出来なかった。
きっと私の顔を真っ直ぐに見てるけど、そんなの私だけじゃないんだから。
今までしてきたことと同じことを、いやそれよりももう少しだけ距離を置いてしてくれているだけのこと。