致死量カカオ
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一体何だ?
目の前の豊海はみるみるうちに顔がどす黒くなってきて、さっきから鼻を押さえてるシャツはじわじわと赤く染まる。
……ひどくなってねえか?
顔ははっきり見えないけど、それでも分かる程の顔色の悪さ。本当に生死を彷徨っているんじゃねえだろうな?
肩を叩くなり「大丈夫」かと頭なり背中なりを指すってやった方がいいのかなと思いながらも……俺が原因なんだったら迂闊に触ることも出来ねえしなあ……。
話題を変えた方がいいのか?
っていっても何が原因になるかわかんねえしなあ……。
うーんと考えながら結局何も出来ない自分に思わず舌打ちをした。
――と、同時に豊海の肩がびくりと跳ねた様な気がして「しまった」と思った。
「あ、や、お前にじゃなくて」
「――いや、大丈夫」
何がだよ。
絶対こいつ……俺が豊海に対してめんどくさいと思った、と思っているだろうなあ。
そういうわけじゃないんだけど、この状態の豊海に何て声を掛ければいいのか分からない。
なんもできねえじゃん、俺。悪化させるだけだ。
あーもう。どうすっかなー症状的にもこのまま放って置いていいのかわからないし。かといって家まで送るのがいいのか悪いのかもわからねえし。
とりあえず足は動くらしいから、考えながらバス停に向かった。
それまで黙ってたらちょっとはマシになんのかなー。