致死量カカオ
何が?そんなこと聞かなくても分かる。やめたいものなんか一つしかねえだろ。さっきの発言も踏まえたらそんなこと明らかだ。
「……無理、もう無理」
「何が?死ぬから?知るかよ。お前何いってんの?」
そんなの今更だ。
何でそんなことを今になって引き合いに出すわけ?
「だって……苦しいんだもん!こんな気持ちで死にたくない!」
俺の言葉に、勢いよく振り返った豊海は涙目でちなみに口元も汚い。
いや、それはもういいんだけど。
「俺はやめねえよ」
「……な、んで?私こんなに汚いし、私と付き合ったって何も出来ないのに!」
顔を背けながら肩をふるわせる豊海。
何も出来ないとか出来るとか、そんなことじゃない。そんなことどうでもいい。
汚いのは否定しないけど。
小刻みに震える豊海はさっきよりも症状が悪化しているように見えた。
だけどそんなことすらどうでもいい。
「お前俺のこと好きだからだって言ったじゃねえかよ」
「だからだよ……」
「意味わかんねえよ。そんなこと知るか。俺はそんなのもう分かった上で今こうやっているんだろ」
まだ数日だけど。
まだ数日だから。
自分の気持ちはまだ言葉にしがたいけどだけどこうやって「やめる」選択肢は俺にはない。
そのくらいは俺は豊海のことを気に入ってるし、この感情はそれこそ今まで感じた事がない。
好きだと、そう思ってくれてるから。
その豊海の気持ちに向かい合おうと思ったのに。この迷惑なアレルギーだって豊海だからだと。
そんな豊海だからこうしているのに。