致死量カカオ
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気が滅入るほどの雨音が耳で思考も閉ざされる。
暗い空は今が朝だと思わせてくれないし、制服もいつもより混んでいたバスのせいで若干濡れた。
「帰りたい……」
小さく呟いた声は雨音にかき消されてゆく。
昨日朝起きると予想通りに手元にあった洗面器は汚いものをため込んでいたけれど、その直後に自分でひっくり返して洗面器はさほど役に立たなかった。
迎えに来たお母さんには相変わらずのあきれ顔を見せられて、家に帰るまで高城に対しての感謝の気持ちを語っていた。
救急車を呼んでくれたり、私の家に連絡してくれたりと色々してくれたみたい。
ちゃんとお礼くらいは言えば良かったなと思いつつも、高城のことを考えると相変わらず体調は優れないまま。
寧ろ悪化しているような気がするのは気のせいか。
きりきりと痛む胃。
昨日からずっと優れない腸。
ちなみに頭痛も鈍いままずっと続いている。
呼吸困難という症状がないだけ生きて居られるきがしているけれど……。
「はあ」
思いからだから少しでも重さを逃がすようにため息を零した。
「重たそうなため息」
背後から昭平の呆れ気味の声が聞こえて、うつろな瞳で振り返った。
そんな私と視線がぶつかると、昭平は苦笑を漏らしてから私の隣に並ぶ。