致死量カカオ
「高城—」
ぼけーっと高城の背中を見つめていると、私よりももっと後ろから高城の姿を見かけた誰かの声が聞こえてきた。
その声に高城はもちろん軽く振り返って、その視線に私は一瞬にして射貫かれた。
色んな意味で。
視界に入るだけでズキュンとくるのは、多分この先一生なれない。絶対。だからこそ離れたんだけど……。
それ以上に、見つかってしまった。
その気持ちの方が大きいような気がした。
高城は一瞬眉をひそめて、私は一気に泣きそうな気持ちになる。
なく資格もないくせに。
「高城おはよ」
私のことには全く気付かず、後ろから来た女の子はそのまま通り過ぎて高城の隣に並んだ。
……見たことある女の人だ。
確か一つ先輩のはず。
茶色の髪の毛は可愛くアレンジされていて、朝からどのくらいの時間を掛けてセットしているんだろうかと思った。
確か、高城の昔の彼女だ。
先輩と付き合うなんてすごいなと思った記憶がある。
半年くらい前の話だけれど。名前は知らないけれど、何度か一緒に帰っていた姿を見かけた。
2人で並ぶ姿は当時も今も変わらず絵に成る。
私が隣にいたら鼠と王様くらいの違和感があるのに。
そんな綺麗な彼女の腰を抱いていた高城の姿に、改めて格好いいなと思った事もある。
ほわほわとあり得ない妄想をしてにやにやしていた。