致死量カカオ

あれが自分だったらどうしようかと。
あの手に触れられたらどうなるだろう。
あの顔が近づいてきたらどんな顔をしよう。

そんなことにわくわくして、時々それでやり過ぎて体調崩してしまったり。


なのに今はそんなバカな妄想でにやける余裕もない。


違いを目の当たりにされた気分だ。
じわりと昨日一日ベッドで休んで溶けたはずの黒い感情がまた体に広がって行く。


胸の真ん中にあった塊が、熱を帯びて溶け出して体を侵略していく。

体の感覚まで奪っていく。
足ってどうやって動かすんだろう。
見たくないから視線を逸らしたいのにそれすら出来ない。


熱を帯びて広がった黒いドロドロの液体は、私を侵すだけ侵すとそのまま固まって私全てをさらっていく。


少し離れた私の距離から、高城とあの先輩の会話は何もきこえなかったけれど……。

話しているその姿だけで息苦しい。喉がつまったみたいだ。


「好きな人、作りたい」


ぼそっと呟いた台詞に、昭平は「作れば?作れるなら」とだけ返して他に何も言わなかった。

頭が痛い。息が苦しい。お腹も痛いし胃も気持ち悪い。


振られることも自ら無理矢理終わらすことだって私は慣れたはずだった。


あり得なかった夢がちょっと現実になって、あり得なかった夢がちょっとだけ先に見えた。


それだけのはずなのに、ちっとも辛さがなくならない。寧ろ悪化してる様にしか思えない。
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