致死量カカオ
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あー……うるせえ。
「高城、新しい彼女出来たんだって?」
「……別れた」
と、思う。
その最後の言葉は心の中でだけ告げると、案の定隣の女、理恵は「えーはっや!」と言って笑った。
その後も何か言っていたけど余り頭に入れることなく適当に返事をするだけ。
朝から何で寄りによって理恵に会うんだろう。
別れてからもこんな風に話しかけてくると言えば理恵か裕子か。
どっちもよくしゃべる。
別れたのかと言われたら……多分別れたんだろう。
あいつがやめた言っていったのはきっとそう言う意味で、思い出すだけでむかついてくる。
後ろにいることを知ったのはさっきだ。
俺が女と並んでいることにどう思うだろうなんて今まで思った事もないような思考が頭を支配するけど、振り返る度胸もないなんて。
バカじゃないのか俺。
何してるんだろうか。
今まで「私のこと好きじゃないでしょ?」なんて言葉でしか振られてない俺が、ちゃんと言葉にまでしようとおもったのに……。
真っ青な顔して。
だけど時折赤くなって。
まるですがるような瞳で、俺を拒否する。