致死量カカオ

その気持ちも分かる。
クラスメイトの後ろには台詞通り、1人の女の子が躊躇いがちな表情をしてぺこりと頭を下げた。


別れたのは一昨日。
どこ俺が別れた情報を手に入れたんだか……節操がねえな。俺が言える台詞じゃないけど。


そんな気分じゃない。

そう言いたい気持ちを飲み込みながら重い腰を上げてドアに近づいていくと、女の子は俯きながら「話があるんです」と小さく呟いた。

何の話かわかっているからここで言って欲しいんだけど……。


まあ、こんなところで告白するような奴はいないか。

女が極端に少ないこんな理系の校舎では見慣れない女がいるだけでそこそこ注目される。

そんな場所で告白何かしたらそれこそ注目の的だし、返事はどっちでも大騒ぎになるだろう。


……豊海はここでしたけど。

本当に変な奴だよな。
普通こんな場所で告白するような奴なんかいないのに。呼ばれて直ぐに告白してきたんだから。


だから、ちょっと……付き合ってみようかと思ったきっかけの一つにはなったかもしれない。


女の子の言うように屋上間際の踊り場に向かいながらあの時の豊海の顔が浮かんだ。

顔は見えなかったけど、だけど髪の毛から少しだけ見える耳も真っ赤に染まっていた。縮こまって真っ赤になって、あんな風に告白してくるバカはあいつくらいだ。


まあ、付き合う気はあいつには無かったんだろうけど。
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