致死量カカオ

ただ私が触れたいだけ。

死にたくないのに死んでしまうほどに触れたい。

自分が触れることが出来たら。

そしたら高城がもしも触れたくない何て言ったって触れるに決まっている。

べたべた手垢こすりつけるくらいに触れたい。

離れることなんか一瞬だってないくらいに抱きついていたい。


このアレルギーがなかったら私絶対に変態として警察のお世話になっていたかも知れないと思うほどに。


だから神様はこのアレルギーを私に与えたのかな。上手いこと出来てるなあ……ムカツクくらいに。


どろどろの気持ちを抱いたまま死にたくない。
そんなの気持ち悪い。

だけど。
幸せのまっただ中でも死にたくない。

我が儘すぎて自分の感情もどうしていいのか分からない。


ふと、脚を止めて振り返ると、そこにはもう高城の姿はなかった。


高城のことを考えるとぎゅうっと胸が締め付けられて、苦しさで眉間に皺が寄る。だけどどこか会えたこと話せたことに喜びも感じる。


アンドロイドとかになっちゃえばいいのかな?

そしたら死なないし、こんな煩わしいアレルギーともおさらば出来るんじゃないのかなあ。

それまで意地でも生き続けなきゃならない。

いつかわからないけどそんなけ生き続けられるほど強かったらこんなことで死ぬこともないのかも知れないけど。


もう見えなくなった高城の姿が、もう本当に……終わらせてしまったんだと思って胸が締め付けられた。


「……お前、口から何か出かけてるけど……?」

「うん、自然現象だから大丈夫……」


とりあえずトイレ……。
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