致死量カカオ
今まで散々吐いたけど、だけどまだ気持ちがマシなのはこれが「悲しい」とか「苦しい」とかじゃなくて「嬉しい」からなのかもしれない。
どっちにしてもすることは一緒なんだけど。
ふらふらと何度も壁に激突しながら何とか辿り着いた靴箱ではあっと一息ついた。
「で?高城は行く?」
「いかねえ。お前らだけで行けば?」
「ったく付き合い悪いなあ」
……この声……。
「何が付き合い悪いんだよ。宮木の日直手伝った俺に対してよくもまあそんなこと言えるなお前は」
大きな声で話される会話に私の体が固まった。
高城。その名前にその声。
何日ぶりだろう。高城の声を聞くのは。
そう思うと無性に泣きたい気持ちになって、元々体力なんて残ってないからこのまま倒れてしまいそうになる。
いや、ここで倒れるとまた迷惑になるし、もしももしも吐いたり何かしたらそれこそもう顔を合わすこと何てできないかもしれない。
もう吐き女とかそんな名前で呼ばれそう。
寧ろ自分が呼ぶ。
ばくばくと体中の血液が沸騰しそうな気持ちで、少しでも動いたら倒れてしまいそうな体を必死で堪えていると……。
横を高城と、そして友達が通り過ぎた。