致死量カカオ
ああ、やっぱかっこいい。
歩く度に流れる髪の毛。括られた髪の毛がふわりと揺れる。
今までずっと、こうやって……1人見つめていたんだ。
それだけで幸せだった。
幸せと苦しみは同じ所にあるから。
同じくらい辛かったけど。
だけど見ていただけじゃなくて、私はもう知ってるんだ。高城の声も、笑顔も、瞳に映る自分も。
……告白しなかったら良かった。
こんなに辛くて悲しくて黒い気持ちにはならなかったのに、そう思っていたけど。
だけど今、そんな些細なことでも知っていて良かったとも思う。
告白して、奇跡的に付き合わなければ何も知らないままだったんだから。
私の視線を感じたのか、高城もふと私の方をみつめて……そして私達の視線がぶつかった。
バンとかバチっとか音が聞こえてきそうなくらい。
綺麗な瞳が私に真っ直ぐに向けられていて、それは、告白する前からずっと憧れていた視線。
スローモーションになったように、音が聞こえない。
ぐるぐると回りそうな私の視界には、もう高城だけしか見えていなくて廻りは全部ピントがずれたみたいにぼやけて見えた。
「た……」
なんで、名前を口にしようとしたのか自分でも分からない。それがどれほどの大きさの声だったかも。
自分にだけ聞こえたのかもしれないし、もしかしたら大声だったかも知れない。
気がついたら口が開いて、名前を、呼びたくなったんだ。