致死量カカオ
――だけど高城はすいっと私なんか見えてなかったのかのように……視線を前に戻した。
聞こえなかった?
いや
聞こえていたから視線を逸らした?
色んな感情が混ざり合った私の頭の中にまで血液が循環する音が響く。
さっきまで、トキメキで緊張して、そして鳴り響いていた心臓の音は、今も変わりなく鳴り響いているのに。なのにさっきとは全く別の意味で動いているような気がした。
「……とうとう」
嫌われちゃったのかな……。
そう思うと一気に涙が溢れて唇が小刻みに震える。
そうなるかも知れないことを知っていたのに。そうなって欲しいとさえ思っていたのに、なのにやっぱりこんなにも辛い。
前より苦しい。
このまま本当に呼吸が止まってしまいそうだ。
ひゅーひゅーと喉が鳴るのが分かる。
今まで見た高城の笑顔と、そしてさっきの高城を思い出すと喜びと同じくらいの、それ以上の悲しさで呼吸が出来ない。呼吸の仕方なんかわからない。
どっちも苦しい。
どっちも死にそう。
だけど唯一違うのは、今のこの状態を招いたのは全部自分だ。それが余計に苦しい。