致死量カカオ



目の前が地面。
そして背後を勢いよく車が走り出した。

舌打ちが聞こえたのは多分運転手だろう。ムカツクけど、まあ気持ちは分かる。


「な、にを……やってるんだお前は!」

ゼーゼーと息を切らしながら地面に尻餅をして俺の下にいる豊海に怒鳴った。


靴箱で死にそうな顔をしているかと思えば……そのまま走って車にぶつかりに行くとか。頭おかしい。絶対おかしい。


「死ぬかと……思った」

「うるせえ」


目をまん丸にした豊海に思わず告げる。

死ぬかと思ったじゃねえ。端から見てたら死にに行ってた様にしかみえねえよ!


名前を呼ばれた気がして振り返れば……。何で車に追突しようとしていたんだお前。

近かったから走って突き飛ばして何事もなく済んだからよかったものの、もうちょっと離れててたら……そのままドッカンだ。

幸い交差点だったから相手の車の速度もそんなに出てなかった……っていうのも運が良かったんだろう。


ホント、勘弁してくれ。
ホント、何するか何もよめねえよお前……。


はあーっと深いため息をついて豊海を見る。

まだ生きて居る実感がないのか目をぱちぱちとさせる。


さっきよりも顔色はマシかな。

靴箱で見かけたときは本当にそのまま死ぬんじゃないかと思ったけど。
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