致死量カカオ
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「よー裕子」
下校時間になって、一人帰ろうと廊下を歩いていると宮木の言葉に足が止まった。
振り返れば、宮木と沢田、そして高城のいつもの三人組。
「何やってんのー?」
「別に。高城は豊海ちゃん待ちだけど、淋しい俺らはナンパの計画?」
「無駄なことを」
宮木の言葉にケラケラと笑うと、宮木は子供の様に大げさに頬を膨らました。さしてもてたいと思ってもない癖に。なんて言ったらきっと「傍に高城がいるからだ!」って怒り出すんだろうけど。
高城をちらっとみると、豊海ちゃんを待っているのか携帯電話で時間を確認している。
ほんっと、人間こんなに変わるなんて。
「高城にとって豊海ちゃんって何が違うの?」
「はあ?」
教室内の時計をみると、待ち合わせ時間までほんの少しだけ時間はある。窓に手をかけて頬杖をつきながら高城ににやりと質問を投げかけた。
「今までの彼女と、どう違うの?」
「……お前に関係ないだろ?」
頬をすこし赤らめてるんじゃないわよ。
鼻でははっと笑いを零すと、高城は分かりやすくムッとする。
「あいつは、わかりやすいからな」
どういう意味?
そう口にしようとしたとき。
「あ、豊海ちゃん」
沢田が声を上げて、視線の先を見つめれば挙動不審に向かって来る豊海ちゃんが見えた。