致死量カカオ
千恵子は豊海の中学からの女友達で、豊海の友達だから俺とも知り合うことになった。
女の子は好きだけど、正直豊海の面倒みるので手一杯だったから、いくら初対面で千恵子のことをかわいいなーって思っても、さすがに恋愛感情には発展しなかった。
豊海のことを恋愛感情で好きなわけではないのに。
決して!これっっっっっぽっちも好きじゃないのに。こんなに面倒見てるんだから実は気付いていないだけで……なんて少女漫画的な感情は、マジで、ない。
今まで散々クラスメイトに言われたけど。
ない。空洞だ。
でもかといって他に好きな女の子がいるわけでもないし、好きになりたいとも想ったこともない。
本当に手の掛かるペットを飼っている気分だ。
こんなに迷惑なのに、放って置けなかったのは、多分、豊海が必死だからだろう。必死になるところをいつも間違うのはもう豊海の細胞の仕様だろう。
馬鹿な子ほどかわいい。
この言葉がしっくり来るんだから仕方ない。ほんっと迷惑だ。
だから、千恵子と会ったときもそのまま普通に顔見知りになるんだと思ってた。
だけど千恵子は、俺と同じくらいに豊海がかわいかったんだろうなーと思う。
二人目の彼氏が出来たとき。
泡拭いて倒れた豊海を見て、泣きながら呼びかける姿に、多分俺は惚れたんだ。
……頭おかしいのかも知れないと思う程に。
ああ、千恵子だったら、豊海を一緒に守って上げられるってな。
告白することも豊海を傷つけるんじゃないかと思ったけど、俺の気持ちに気づいた豊海は怒り狂いながら言った。
「私のせいで告白しないとかやめてよ!つきまとう気!?いやだ私は恋がしたいの!私のせいにして付き合わないで30歳とかなって、俺ら都合良いし結婚するか?とか言うつもりでしょ!?」
死ねばいいのにって思ったけど。
もちろん一発は殴ったけど。
お前と結婚するくらいなら俺は1人で土に埋まる方がマシだ。
豊海の思考回路は付き合いが長くても全く分からないけど、ほんの少しくらいは、俺の背中を押してくれたんだろうな。
千恵子の気持ちにも気づいていた豊海のことだから。
バカの癖に。