致死量カカオ
「高城、また別れたって?」
俺と宮木の間からひょいっと顔を出した長い髪に暑苦しさを感じてすぐさまさっと一歩横にずれた。
髪がうっとうしいのも確かだけど、顔を出したであろうその人物も負けじとうっとうしいからな。
「何高城避けてるのよ」
「暑苦しいから引っ付くな」
俺を見て不満そうに長い髪の毛を耳にかける裕子に、しっしっと右手を上下に振ると裕子はきれいな顔をにやりとゆがませて俺の肩にまた腕を乗せる。
「元彼女に対してその態度はどうなの?」
「元って、一年以上も前のことで一週間も付き合ってないだろうが」
俺の言葉に宮木も悪乗りを始めて裕子と共にひそひそと俺の悪口をつぶやく。
一週間で元彼女だのなんだのと絡まれるのはめんどくさい。その上俺を振ったのはこの裕子の方だ。
しかも別れて一ヵ月後に新しい彼氏ができたとかで自慢してきやがって、その間に振られた俺を盛大に笑った。
その彼と今も仲良くやっているらしい。
あてつけのようにのろけ話を聞かせやがって。
今日は迎えに来たとか誕生日にこんなお祝いをしてくれたとか。メールがどうとか。
俺はそんなにマメじゃなくて悪かったな。言われたってできねえもんはできねえよ。