致死量カカオ

俺の付き合い方に愛がないって言われてもなあ。じゃあお前らが夢中にさせてみたらどうなんだ。

なんていったら平手を食らうだろうから言わないけど。


一緒にいないといやだとか。
いつもそばにいたいとか。
ほかの男に嫉妬するとか。
独占欲とか支配欲とか。

自分がそんな風に必死になるなんて自分でも想像できないな。


「そういや昨日、告白されて殴って女の子を気絶させたってまじで?」


裕子の言葉に思わず盛大にこけそうになった。


「なんだそれ……」

「えー?クラスの男の子が話してたよー?私も見たかったなー見たら盛大にののしったのに。女の子に手を上げるとか最低―。

そんなにぶさいくだったの?」

「殴ってねえよ!勝手に倒れたんだよ」


悪意しか感じないそのうわさはなんなんだよ。

俺の言葉にけらけら笑いながら「まあそうだろうと思ったけど」と裕子は俺の肩をばしばしとたたく。


付き合う前からこのさばさばした性格は一緒にいて楽だった。だけどそれまでだ。付き合ったからといって、ちょっとかわいい一面を見たからといってそれ以上の感情を抱かなかったのは確かだった。


「で?付き合うの?」

「しらねえ」


もうこの会話もめんどくさい。

ため息を漏らしながら裕子に告げると宮木と一緒になって二人は「何で何で」と興味津々に前のめりになって俺に顔を近づけた。


こいつらはなんでこういつも人の恋愛に興味を持つんだ……いや、まあ面白いだけなんだろうけど。
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