致死量カカオ
私と高城は話したことは一度だってない。
2クラスしかない理系コースと、7クラスに別れる普通コースは、1年のときに決められて、その後、接点なんか何一つない。校舎も違うから見かけるとしても、教室移動のときにすれ違うとかくらいだ。
しかも私は『見た目がいいからいっちょ付き合ってみるか』と思われるような容姿でもない。
高くも低くもない身長。さらさらでも剛毛でも天然パーマでもない髪の毛。真っ黒と言えるほど黒くもないし、茶色と言われるほど明るくもない。
太ってもないけれど痩せてもない。
自慢できるものなんか、自慢じゃないけど何もない。
そんな私の告白を、高城が受け取るはずがない。
そう思って、告白してきたのに!
「え? なんなのお前。おちょくってんの?」
「そういう訳じゃないけど……だけど断ってくれないと困るんです! 断って貰うために告白したのに」
「お前……頭おかしいの?」
「おかしいから、振って! ほら! 振って!」
「……いや、だから意味わかんねーって」
そんなことは重々承知の上ですけれども。
目の前にある綺麗な顔を直視していたことに、今更気付いてぶるっと体が一瞬震えた。ああ、若干息苦しくも感じてきた。
「いいから振ってってば……!」
大声が多分引き金になったんだろう。どくん! とまた心臓が大きく跳ねた。
くらりくらりと回る視界。
ああ、もうこれだから嫌なんだ。
告白する時も大概心臓壊れるかと思ったけど、高城があんなことを……――いいよ、なんて言うから。
ああ、嬉しいなあ。
ああ、悲しいなあ。
ああ、死にたくない。