致死量カカオ



何時の間にか家に帰って、何時の間にか眠って目覚めると、昨日のことは全部夢だったんじゃないかと思えてきた。

ていうか、夢であった方がいいかもしれない。


「あー吐きそう」


虚ろな目でふらふらと青空の下を歩くのはなかなか不釣り合いで現実味がないな。


昨日吐いてから体調が一向に良くならないのは、高城のせいだ。

彼のせいにするのはお門違いだけど、それでも冗談であれ告白に下手な期待を残すような返事をしたからだ。


ときめいて仕方ない。


いつもなら、告白して振られて、それは悲しくて悲しくてつらいけど、それでも寝たらこの苦しさからは開放されていたはずなのに。


逃げ出すつもりが捕らわれてどうする。


取り合えず、忘れるべきだ。

適当に返事をするような最低な男だったのだと思い込めばいい。ころころ彼女を変える男だ。好きにならない方がいい。

でもまぁ、あの、顔なら仕方ないか。にかっと笑うあの顔はかわいくて仕方ない。私より絶対かわいいし。


そんな彼に付き合う?なんて言われちゃったんだもの。


付き合いたいよ!コンチクショー!

手とか繋いでデートしたいよ!一緒にお弁当とか食べたいよ!

手を絡ませてキスとかしたいよ!

抱きしめたいよ!高城はきっとゴツゴツしてるだろうけど、腹筋とか撫でたいよね。


あと私の抱き心地はけっこういいと思うよ。胸はないけど肉はあるし。

ペット感覚で私と付き合ってみたらどうだろうか。


付き合ったら一時間で死ねる自信はあるけど。好き過ぎて多分一瞬で心拍停止する。
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