致死量カカオ
「諦めないとなあ」
このままじゃだめだと、それだけは分かる。
「付き合おうか」なんて思いも寄らない返事はこのまま恋愛が出来ないだろう私への神様からの贈り物だったのかも知れない。
死ぬかと思ったけど。
「諦めるつもりなんてホントにあるの?」
はあっとため息を零したと同時に昭平がにやりと笑ったような声で言って目の前を指さした。
数十メートル先に見える三人の人影。
そのうちの一人が……高城であることくらいは私だってすぐさまわかる。
一年以上見つめてきたのだから。
一目惚れして、学年とクラスを調べて、そして登下校の時間まで合わせたのだから……。
我ながら素敵なストーカー行為だと思うんですよね。
だってこうでもしなきゃ一日に一度も顔を見ないなんてことになってしまうもの。
ちょっと見つめる時間を作るくらいはいいでしょう?
「何で時間をずらさなかったの?」
口の端だけをくいっと持ち上げて笑いかける昭平の顔は本当に憎たらしい。
私の気持ちを分かっている癖にそんな風に聞くんだから。
「癖よ」
昭平の方を一旦見てから、ぷいっと顔を背けて呟いた。