致死量カカオ
睨み付けると、宮木と沢田が俺の背中でこそこそと話し続けた。
「マジなんじゃね?」「嫉妬か。高城も嫉妬を覚えたか」とかで、前にいる俺には小声で話されても丸聞こえなんだけどな、お前ら……。
嫉妬とか、バカじゃねえか。
こんなもん嫉妬のはずもない。
好きかどうかもわからないどころか、好きじゃないしな。
ただ俺のことを好きかどうかもわからない、なのに告白するっていうのは気分が悪い。それだけだ。
俺を見ると死ぬって言うからには、好きなのかもしれないけどそんなのわかるはずもない。
なんだか妙に納得がいかなくていらついているのは事実だけど。眉間にしわもよるっつうの。
苛立った気持ちで窓の外を眺めていれば当然視界には豊海が入って、俺の見たことのない顔で過ごしているその顔に余計苛立ってくる。
豊海のそばに昭平が近づくと、昭平がふと俺の方を見て笑った。
いつから気づいていたんだか。あいつもなかなか読めない男だよな。
そのまま豊海の隣に並んで豊海の耳元で何かを呟いたように見えた。
と、同時に勢いよく豊海が顔を上げて俺らのいる窓に視線を送る。
「あ、気づいた」
「手でも振ってやれよ、愛する彼女がこっちみてるんだぞ?」
……うるっせえな、ほんと……。
俺の睨みに気づかないふりをしているのか、二人はそのまま窓から顔を出して豊海たちに手を振る。