致死量カカオ

「今からたいくー?」

「え、あ、はい」


何で敬語なんだよ。

沢田たちの言葉に顔を真っ赤にさせて、おろおろしながらそう答える豊海を見て、なんとなくさっき沢木が言っていた意味を理解した。


……つーか。
何顔を赤くしてんの?


「ほら、お前もすねてないで」

「なんで俺がすねるんだよ!」


宮木がまるで俺をあやすようにそう言って無理矢理俺の手を持ち上げる。

ばっとその手を払いのけて運動場を見れば、固まった豊海の視線とぶつかった。


……挨拶、ねえ。


ぽりぽりっと頭を掻いて行き場を失った手を頭に当てた。

ここまで目があって無視するのもなんだか感じが悪い……よなあ。


「よお」


と言葉と共に軽く手を豊海に向ける。


「体、大丈夫か?」


まあ体育に出てるってことはそれなりに戻ったんだろうけど。とりあえずそれ以外に言うこともないし。


俺の言葉に「私!?」とっまわりをきょろきょろさせた後、隣にいる千恵子と昭平に促されて再び俺を見た。


顔は真っ赤だ。

熱中症でぶっ倒れるんじゃねえのかと言いたいくらいに。

……さっき沢田たちに見せた顔よりもよっぽど赤い。


「……あ、え、あ、う、あ、はい、あ、」


……日本語話せよ。
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