致死量カカオ
「ムカツク」
宮木にも沢田にも聞こえないくらいの大きさではき出された自分の声。
その感情の名前はまだわからないけど。
ただ、へらへらと笑う豊海にいらだちを感じて仕方ない。
そのまま俺の方を見て、一瞬固まった後にすぐ目をそらすのも気に入らない。
お前は俺が好きなんじゃなかったっけ?
死にそうだからそういう態度を取るって?
そんなこと知ったこっちゃないんだけど?
「高城って結局うぬぼれた男だったってことなんじゃない?」
「……裕子?」
背後からの声に振り向けば、いすの上に立って俺を見下ろす裕子の姿。
っていうかなんで椅子に乗ってんの?
「自分のことを好きだって言う女の子としか付き合ってないから、たとえ高城が好きになったところで余裕があるんだよねー。
だから女の子からしてみれば不安が募るってわけで」
「お前なんで俺らの教室にいるんだよ。帰れ」
「冷たいなあ、キスした間柄のくせに」
……お前は本当に都合の良いときだけ彼女だったことを口にするよな。
お前とのキスにはその言葉の前に「間接」が付け加えられるだろうが。それ以外のものなんかしてねえよ。
しかも間接キスだって付き合っていようがいまいがしてたじゃなねえか。そんな意味深に言うな。