致死量カカオ
「高城くん!」
「お前にくん付けで呼ばれてろくなことがあったためしがねえんだけど?」
椅子から降りた裕子が俺の肩にぽんっと両手を置いた。
晴れやかな笑顔がすげえ嫌な予感しかさせないんだけど。
「付き合うって言ったからには、ちゃんと付き合うんだよね?」
「……あのなあ、お前らにとっては面白いかもしれねえけど付き合うも何もあいつか俺を見たら死ぬとか言うんだからどうしろって言うんだよ」
「じゃあやめるの?」
……あん?
俺の言葉に裕子が「ぷ」と吹き出したようにバカにした笑いを作った。
「逃げ出すんだー?昭平とかいう男の子に頼まれたのに。まー無理かー恋愛不向きな高城君には荷が重いかーそっかーそうだよねえ。
恋愛経験だけ豊富で恋愛下手な高城だもんねー?」
おい、ちょっとまて。
何でそこまで言われないといけねえんだ?おい。
「誰がやめるって?」
「ん?」
「やめるわけねえだろ。よくわかんねえけど付き合うって言ったんだから付き合うに決まってるだろ」
俺の言葉に、裕子はにやりと笑みを作った。
……なんかもう訳がわからなくなってきた。
少なくとも今の俺にわかるのは、裕子にまんまとのせられたな、ということと、やってやろうじゃねえかという気持ちだけ。