致死量カカオ
ふうっと一息ついて隣の校舎を見上げた。
この校舎の三階が、高城のクラス。
さっきまで一緒にいたなんて今でも信じられないくらいだ。
逆に言えば一緒にいたなんて夢であってほしい。リバースした瞬間だけ高城の脳内の記憶をお花畑に変換してくれないかな。
もしくは美女の顔にするとかして。
思い出すだけで泣ける。何を口走ったかもなんかもう覚えてないし。
千恵子の話に寄れば土下座してたとかなんとか言ってたけど……そんなの幻覚であってほしい。思い出したくもない。覚えてないけど。
体育の時間が始まる前に手を振られただけで鼻血が出るとかもう末期なんじゃないだろうか。
あの窓から顔を出して、私を見て微笑んで手を振って「頑張ってね豊海」なんて言われたらそりゃ鼻血もだすっつーの!
しかも豊海って。
名前知っていてくれたとか、それよりももうあの顔と唇で呼ばれたらそりゃリバースくらいするっつーの。
むしろリバースですんだだけすごくね?
「すごくねえよ!」
思わずがくりと肩を落とす。
まさか自分の妄想に自分で突っ込む日が来るなんて。
「ほんと、チョコレートだ……」
甘いだけならいいのに。口に入れたら広がるのは甘さだけのはずなのに。
私にとってはそれだけじゃ収まらない。
じわじわじわじわ広がったチョコレートの甘さが私の体に広がって、広がるだけならともかくも、蓄積されていくんだから。