2222―SF(すっとぼけフィクション)―
◇◇◇◇◇


まえに、
目の見えなくなったオレが、

科学のかけらもない、

とんでもない場所をユキと放浪していたとき。



【あたしをおいて、いきなよ】



ってユキに伝えられたことがある。


手のひらに、
指で字を書いて。


それは、
ユキと初めて会った日から、

1ヶ月位が過ぎたある日。



【だいじょうぶ。
ワタルなら、あたしいなくてもやってけるよ。
他の誰かが助けてくれる】



この時オレたちは、ひどく衛生状態の悪い村にいた。


さらに、
ユキがたちの悪い伝染病に感染していたのだ。


ものすごく感染率と致死率が高い病気に。


このままこの村にいたら、

8割の確率で死に至るという。


もちろん、
感染率がすごいから、
オレの命だってやばいかもしれない。


おまけに、
治療のできる大きな町まで歩いて3日はかかり、


他に交通手段も連絡手段もない。


以前は外界と少しは交流していたらしいが、

今は接触を完全に拒絶してしまい、

完全に自給自足の生活をしている村だ。



22世紀の文明がこの村に残っていたら、


まだ対処のしようがあったとある村人はいうが。


そんなものは、
23世紀のはじめには、
世界の大部分でなくなってんだ。


おまけに村人達は、
村を守るために、
オレたちのいる建物を燃やそうとしている。

村人たちの言い分はこうだ。


どっちにしろ、
ユキは命を落とす。
この村から出ても、
いくところはなく、
また戻ってくるしかないのだから。

そのときに、
村人の誰かが感染し、
2次被害を出す恐れもある。

ならいっそのこと、
ユキもろとも、
きれいさっぱり病原菌を焼き払おうってことだ。


ふざけるな。


さらに質の悪いことに、

村長の野郎がユキのことを村を滅ぼしにきた魔女だとか、

いいはじめやがった。


「ここは現在、細菌の繁殖率が高くて危険です」っていう、

国からの退避勧告がでても、

自分達の場所を守るために動かなかったやつら。

間違いなく本気だった。







< 4 / 61 >

この作品をシェア

pagetop