2222―SF(すっとぼけフィクション)―
○○○○○


何かこげる臭いがしてきたときに、

あたしはワタルの大きな背中によじ登って、
しがみついた。


それから、
ワタルの頬に指で矢印をかいた。


うなずいて、
その方向に進むワタル。


ドアの前までいって、

そのままおもいっきり頭ぶつけるワタル。


ぼおっとする意識の中で、

ちょっとおもしろい。


というか、
ドアの位置とか、

どうやって教えていいかわからない。

て思ってたら、
ワタルがあたしの左腕をたどって、

手を開いて字を書いてきた。


[つかまってろ!
絶対にはなすな!]



[うん]



右手で頬に返事を返した。


少しさがって、
助走をとり、
ドアに蹴りをぶち込むワタル。

超強烈な一撃、
外れてぶっとぶドア。


[まっすぐいけるか?]


[OK!]


走り出したワタル、
驚いた顔の村人たち。

感染者のあたしがいるからみんな道をあける。


あたしは走り続けるワタルの背中で、

手のひらにワタルの言葉を感じた。



[ぜってえ死なせねえから]



悲しくないのに涙がとまらなかったのは、

そのときがはじめてだったかもしれない。


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