授けられた力・消えた記憶

 「消えなかったのは、旅人の中の1人だけだ。その1人に聞いた所、何も返答は無かった。」

3人の質問にきっちりと答える男。さらに付け加える。

 「一点を見つめ、ただ首を振るだけ…何を見たのか、何があったのか、何も言わず、1人でどこかへ旅だった。何かを…求めるように…」

 「…何かを…求めて…」

静かに聞いていたカリンがそう呟いた。

 「?カリン?」

 「…」

心配したのか、ルイがカリンの名を呼ぶ。が、カリンは何も言わなかった。

一点を見つめ…まるで、男が話した生存者のように…


男はさらに、4人に恐怖を与えるように最後に付け加えた。

 「だから気をつける事だな。ここにいる時は1人にならない事だ。じゃ、俺は用があるんで。」

男はそう言い、4人に手を振って席を立った。

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