授けられた力・消えた記憶
イワンはマイに目を向ける。
彼の切れ長の目でマイを見つめ、次に出た言葉は…
「重いんや…それが…俺にとって…重いんや…」
マイにとって辛い言葉…
「…」 バッ
マイはその場から走り去った…
宿を抜け出し、町を走るマイ。風を切りながら、頬には暖かい物が伝う。
イワンのその言葉…
わかっていた…全てわかっていた…
なのに…なのに、苦しくて…悲しくて…辛くて…どうしようもなくて…ただただ、涙が頬を伝っていく…
もう流さないと決めていた涙が…誰も愛さないと決めていたのに…
全ての重い決意が、涙と共に流れ出る…
いくら流しても消えない心の傷…
いくら流しても心は癒えない…
いくら愛しても叶わない恋…
それはわかっている…
マイは涙を拭いながら走り続けた…
体力が続くまで…
全ての苦しみが消えるのならば、いつまでも…いつまでも走り続ける…