授けられた力・消えた記憶

グッと拳を握りしめるルイ。

唇を噛み締め、怒りに絶えた…


彼女は、そんなルイを、心配そうに見つめる…


少しの沈黙…

2人の髪を、暖かな風が揺らし、目の前にあった、小さな、赤い花を揺らした…


その花を見つめる彼女…

その瞳は幸せそうに笑ってて、心を癒してくれるようだった…


そんな彼女の表情を見るだけで、こっちも笑顔になって…


口元が緩んだ時、彼女は長い髪を揺らし、ルイへと振り向くと、強い意志のこもった瞳で、訴えてきた…


 「あの…もしかしたら、ノワールの事を思い出すかもしれません。だから…だから、私を一緒に連れて行ってくれませんか?」


 「?君を?」

 「はい…。ダメ…ですか?」


(ノワールの事は知りたい…だがこの子を危険な目に合わせる訳には…)


 「ダメだ」

ルイの答えはそうだった。

例え情報を得る事ができたとしても、彼女は連れていけない…

こんな可愛らしくて、純粋な彼女を、傷つけたくない…

いや、傷つけちゃいけないから…



だが彼女は諦めようとしない。

 「…お願いです。私、自分が誰なのかわからないんです。何をしたのか、何があったのかも…だから…」


彼女は潤んだ瞳でルイに訴える。


(何を言っても引き下がる事はないだろうな…)

そう考えたルイは決意した。


 「…わかった。一緒に行こう。」

 「!いいんですか!?」


 「あぁ、一緒に行こう。君の記憶を取り戻す為に」

 「はい!」


彼女は満面の笑みを浮かべたのだった。

輝かしいその笑顔…

なんて綺麗なんだろう…


いつ見ても、見とれてしまうその笑顔…



こうして、俺達の旅が始まった。


< 20 / 380 >

この作品をシェア

pagetop