授けられた力・消えた記憶
グッと拳を握りしめるルイ。
唇を噛み締め、怒りに絶えた…
彼女は、そんなルイを、心配そうに見つめる…
少しの沈黙…
2人の髪を、暖かな風が揺らし、目の前にあった、小さな、赤い花を揺らした…
その花を見つめる彼女…
その瞳は幸せそうに笑ってて、心を癒してくれるようだった…
そんな彼女の表情を見るだけで、こっちも笑顔になって…
口元が緩んだ時、彼女は長い髪を揺らし、ルイへと振り向くと、強い意志のこもった瞳で、訴えてきた…
「あの…もしかしたら、ノワールの事を思い出すかもしれません。だから…だから、私を一緒に連れて行ってくれませんか?」
「?君を?」
「はい…。ダメ…ですか?」
(ノワールの事は知りたい…だがこの子を危険な目に合わせる訳には…)
「ダメだ」
ルイの答えはそうだった。
例え情報を得る事ができたとしても、彼女は連れていけない…
こんな可愛らしくて、純粋な彼女を、傷つけたくない…
いや、傷つけちゃいけないから…
だが彼女は諦めようとしない。
「…お願いです。私、自分が誰なのかわからないんです。何をしたのか、何があったのかも…だから…」
彼女は潤んだ瞳でルイに訴える。
(何を言っても引き下がる事はないだろうな…)
そう考えたルイは決意した。
「…わかった。一緒に行こう。」
「!いいんですか!?」
「あぁ、一緒に行こう。君の記憶を取り戻す為に」
「はい!」
彼女は満面の笑みを浮かべたのだった。
輝かしいその笑顔…
なんて綺麗なんだろう…
いつ見ても、見とれてしまうその笑顔…
こうして、俺達の旅が始まった。