授けられた力・消えた記憶

先程の2つの影は、今、ある廃墟の前にいた。

 「ここだね…」

ノワは廃墟に歩み寄りながら言う。

 「?ここは…」

リリンはノワに問うが、ノワは何も言わず、暗闇へと消えた。

それを気にする様子は無く、リリンも後を追い、暗闇に消えた。


薄暗い…地面に何があるかわからない…

しかし、この2人には見えるようで、着々と前へと進んでいく…

水が滴る音…何か生き物が動く音…様々な音が聞こえる…

そんな音を気にする様子もなく、2人はある扉の間で足を止めた。

重く、固く閉ざされた扉。
二度と開く事のないような…

その扉へと手をかけ、力強く押す。
すると、鉄が錆びたようなきしむ音が、暗闇に響く。

 「王、いるか?」

中へと入りながら、ノワはそう言った。王、と…


広い部屋…その中に、その人物はいた。

悪魔と言って相応しい姿の男。
昔、ルイと戦った悪魔の男である。

 「…誰だ…」

声の主を鋭く睨む王。だがその目には、悲しみが含まれているような気がした…


< 269 / 380 >

この作品をシェア

pagetop