授けられた力・消えた記憶
「これは危険だ。危ない目に合うだろう。」
王の悲しみを秘めた瞳…
それは、ミミを失った悲しみ…
そんな重いを、ノワや、リリンにはさせたくなかったのだ…
「ですが私…」
リリンは退こうとはしない。が、
「そうだね。リリン、お前はここにいな。」
ノワまでもが、リリンを止めたのだ。
「…」
この緑色の瞳に見つめられ、そう言われると、逆らうことができない…
渋々従うしかないのだった…
「大丈夫だよ。必ず戻ってくるから。それまで、待っててくれるよな?」
リリンの瞳をのぞき込み、言う。その姿が、優しく思えた。
初めて見る、ノワの優しい瞳…
「…はい。お待ちしております、ノワ様…」
リリンは決意した。ノワを待つ事を…
帰りを待つ事を…
その様子を見て、王は切り出す。
「じゃあ、行くぞ。」
「あぁ。」
そうして2人は暗闇へと消えていった…
「お気をつけて…」
いなくなったその暗闇へ、リリンはそう呟く。
帰ってくるかもわからない…その姿に…