授けられた力・消えた記憶


 「んな事できへんで!」

ノワールの息子と聞き、イワンは鋭い目をして言う。
そう言うのも仕方ない。ルイに力を与えた張本人の息子なのだから…


しかしカリンは違った。

 「でも何で?」

穏やかな表情でそう訊いたのだ。

カリンの反応に、リリンは少し驚いた様子を見せたが、話し出した。

 「ノワ様は、ノワールに殺されました…ノワ様だけではありません。王も、その他の者達も…」

悲しみを含んだ瞳の理由である。
ノワね事を思い出したのか、リリンは悲しそうに言った。


 「どうして…」

何故ノワールの息子であるノワを殺したのか…
何が起こっているのか…

 「何があったんだ?」

ルイは、青い瞳をリリンに向ける。
強い意志を秘めた瞳である。また、許せないという、怒りも含まれているようだ。


その強い瞳に見つめられ、リリンは少し戸惑ったが、続ける。

 「わかりません…しかし、ノワールは何かをするつもりです。手遅れになる前に…」

 「…そないな事が…」

イワンもリリンの事を信じたようだ。
心配するようにリリンを見る。

 「私もいつか殺されます。ですからその前に、あなた方にこの事を伝えたくて…」

いつ殺されるかわからない…
でも、それを承知でここへ来た。


自分の最後の使命を成し遂げる為に…


< 295 / 380 >

この作品をシェア

pagetop