授けられた力・消えた記憶
「んな事できへんで!」
ノワールの息子と聞き、イワンは鋭い目をして言う。
そう言うのも仕方ない。ルイに力を与えた張本人の息子なのだから…
しかしカリンは違った。
「でも何で?」
穏やかな表情でそう訊いたのだ。
カリンの反応に、リリンは少し驚いた様子を見せたが、話し出した。
「ノワ様は、ノワールに殺されました…ノワ様だけではありません。王も、その他の者達も…」
悲しみを含んだ瞳の理由である。
ノワね事を思い出したのか、リリンは悲しそうに言った。
「どうして…」
何故ノワールの息子であるノワを殺したのか…
何が起こっているのか…
「何があったんだ?」
ルイは、青い瞳をリリンに向ける。
強い意志を秘めた瞳である。また、許せないという、怒りも含まれているようだ。
その強い瞳に見つめられ、リリンは少し戸惑ったが、続ける。
「わかりません…しかし、ノワールは何かをするつもりです。手遅れになる前に…」
「…そないな事が…」
イワンもリリンの事を信じたようだ。
心配するようにリリンを見る。
「私もいつか殺されます。ですからその前に、あなた方にこの事を伝えたくて…」
いつ殺されるかわからない…
でも、それを承知でここへ来た。
自分の最後の使命を成し遂げる為に…