授けられた力・消えた記憶


 「ならば、死ね。」

 「…」


一瞬の事だった…


姿が消えたかと思うと、背後からの声…

振り返る前に痛みが走る…


 「っ…」

リリンは背後の人物へと目をやる。

そこには、ノワールの姿が…

そしてノワールはリリンの背中に何かを押しつけている…


そちらへと目をやるリリン…

 「…」

背中に刺さる短剣…

ノワールはリリンの持っている短剣を奪い、背後から心臓を狙ったのだった…


ノワの血で染まっていたリリンの服が、自らの血で染まる…


大量に流れる血…

リリンは確信した…自分は、死ぬ…と…


ノワを、王を、全ての者を殺した生ける屍…

リリンは最後の力を振り絞って、ノワールに攻撃をする…

振り返ると同時に、ノワールの首をかっきろうとしたのだ。が…

的は外れた。が、傷を付ける事に成功した。しかしその傷は、命に関わるものではない…

ただの、ひっかき傷…


頬を伝う赤い血…

ノワールは少し驚いたようだったが、もう攻撃はできないと察知したようで、何もしなかった…


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