授けられた力・消えた記憶

●力


どこなのかもわからない自然溢れるこの地で、
青き瞳の男と、濃い緑色の瞳の男が戦いを繰り広げていた。


それ程離れていない所で倒れ込む女。


暗い何もない空間…彼女の心の中だろうか…

彼女は、夢の中で見ているように、その戦いを見つめていた…

いや、まるで、生と死の狭間にいるような…



 『フフフ…』

 「!誰…」

彼女の耳に、何者かの笑い声が響く。

 『フフフ…ハハ…』

近づくその声…

その声は、ついに彼女の背後に詰め寄った…

振り向くカリン…

 「!!」

そこにいたのは…もう1人の…自分…


まぎれもなく、そこには、自分の姿が…

訳がわからないカリン…

それに対し、目の前の彼女は、口の端をつりあげ笑っている…

 『嬉しいよ。』

 「!?」

 『何がって?それはね…自由になれる事がだよ!』

高らかに笑う彼女…
その姿は、カリンに似ても似つかない…

 「!?自由に、なる…?」

眉を潜めるカリン。
突然の事で、思考がついていかない…

カリンの反応を見て、彼女は笑うのを止め、憎しみのこもった瞳を向ける。

 『そうさ、私の力は完全になった。貴様など、私の奥底で一生眠らせてやる!2度と外には出さない!』

 「!!」バッ

危険を察知し、カリンはどこなのかわからないこの暗闇を、駆け抜ける…


身を守るように…


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