授けられた力・消えた記憶

荒れた地…
その中の唯一の大木…

そこに、血まみれの男がもたれかかっていた…

 「クッ…私が…」

腕の傷は塞がってはいるが、大量に出血したのだろう、腕全体が赤く染まっている…

腹部の傷からの血は、止めどもなく流れ、傷口を手で押さえている…


その時だった…

 『まだ、なのか…』

心の中から聞こえる声…
それは、悲しみや、苦しみを帯びた、ノワールの声…

 「うるさい!」

ノワールはその声に怒鳴る。周りから見れば、独り言を言う、危険な人物だと間違われるだろう…

いや、血まみれという所で、危険だと思われるだろうが…


ノワールの声など気にする事無く、内の声は言う。

 『私はカリンの命の為、自らの命をお前に…ゴホゴホッ』

 「勝手に出てきよって…お前など、死んだも…」

 『もう、死ぬ…』

ノワールの言葉を遮る。
その言葉に、目を見開くノワール。

内なる声に訊きただす。

 「!どういう事だ…!?」

 『私の命はもう少ない…もって、あと数ヶ月…それまでに、カリンに…』


 「数ヶ月…だと…?聞いておらんぞ!」

 『どっちにしろ、時間がないのだ…カリンに合わせてくれ…頼む…』

 「…」


内なる声に、戸惑うノワール…

本当なのか…


どちらにしろ、やるべき事をやらなければならない…


まだ、終わっていないのだ…


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