授けられた力・消えた記憶

 『フフ…夜だ…』

 「!」

空を見上げると、厚い雲が覆い、光を遮っている…


暗闇が支配する、本格的な夜の到来だ…



       ズキ!

腕に響く痛み…



(毎晩続くこの痛み…どうしたら…)


 『そんなの決まってる。フフ…死ねばいいんだよ。』

誘うように言う声…


 「!…」


その言葉を聞き、母親にもらった短剣へと手を伸ばすカリン…


 『やっとやる気になったの。フフ…』

勝ち誇ったように、心の声は笑う…

しかし…


 「何言ってるの?」

アザへと目を向け、睨みつけるカリン…

 『何する気だよ…』


短剣を握りしめ、高々と持ち上げ、勢い良く振り落とす…



       グサッ…

何かを刺した、音…

そして…


      ポト…ポト…


赤い雫が地面へと流れる音…


暗闇の中、その音だけが、響き渡った…


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