ちゆまど―世界は全て君のために―
「何を言っている。ユリウスは戻りたいと」
「本心ではない。自分で自分の想いを彼女は否定していらっしゃる。そのせいで、私の力が及ばない作用が働いているのですよ」
「どういうことだ。“人体”に関してのエキスパートではなかったのか」
「そうですよ。事実、私はあなた方の奇跡を帳消しにしました。が、ユーリさんがその事象を白紙に戻そうとしている」
「訳が分からないな。ユリウスができるのは治癒だけだ、そんな力など」
「治癒もその派生にすぎない。……本当は、ユーリさんには自分で気づいてほしかったのですが。致し方がない」
姫様が私だけを見る。
昨日の穏やかな顔ではない、どこか厳しいような眼差しだ。
「ユーリ……いえ、“時の調律師”(ユリウス)。あなたの力はね、時間なのですよ」