ちゆまど―世界は全て君のために―
彼女の真実
(一)
気づけば、あのワインセラーにいた。
もとの世界に帰ってきたんだなというのは、この部屋から悟った。
シンシアさんはいない、外にでも出ているのだろうか。
いや、それよりも。
「シブリールさん、すみません……!」
謝らなければならないことがあった。
「せっかくシブリールさんが決意を固めてくれたのに、私は……」
無意識とはいえ、私がシブリールさんを解き放たないんだ。
悪いと思って頭を下げたのに、シブリールさんはいいんだと言ってきた。
「筋違いだよ、それは。逆に俺はユリウスと一緒にいられて嬉しい。どんな形であろうとも」
「でも、不自由な思いを」
「勘違いしないで。俺は一度足りともユリウスといて、不自由と感じたことはない。あるのは幸せだけ」