ちゆまど―世界は全て君のために―
作為的になる地鳴りのようだった。
その度に、天井から小さな石が落ちてくる。
「ユリウス、出よう……!崩れたら大変だ!」
彼に連れられて、階段を上がる。ランプが落ち、ほとんど手探りで段を上った。
やっとついた地上。その頃には地鳴りはなくなっていたが――景色が変わっていた。
家がない。
確か、私たちは家の中に入ったはずだ。
なのに、容赦ない明かりが私たちを照らす。
いったい何がと足を進めれば。
「“地上最たる獣”(ヘビーモス)っ!しっかりなさい!」
悲鳴にも近い叫び声が聞こえた。
駆けつけてみれば、いたのはシンシアさんだった。
上品に振る舞う彼女らしくない。焦って、隣にいる角の生えた藍色の大獣に必死に呼びかけていた。