ちゆまど―世界は全て君のために―


意味がよく分からなかった。


「此処にないなら他所だ。この世界にないなら別の世界の宛をあたろうではないか」


前にシブリールさんが言ったことを思い出す。


世界というのは無数に存在する。


人間の世界。動物の世界。死者の世界といった形に。


私たちがいる世界は、認識する内の一つでしかないと。


「他の世界では、私たちが離れる術があるのですね!」


「ああ、余はそれをする者を知っておる」


「嘘をつかないでもらえますか、ババア。あなたにできないのに、100%の確率で俺たちを引き離す技術など」


「いるのだよ。たった一人、完璧にして万能なる者が。余の友人だ」


シブリールさんが苦い顔をする。嘘でないことはあの顔が言っていた。


< 16 / 237 >

この作品をシェア

pagetop