ちゆまど―世界は全て君のために―
「その者は、“人体”というワードが絡めばどんなことでもなし得る強者だ。“全人類の毒”にして、“全人類の方舟”。治療、殺人、もっともその者は神のように慈悲深く、己が力を人類の役に立てようとしておる」
「聞いたことありませんね、そんな奴。俺も数多の世界を回ったが、聞いたことなど……」
「世界は無限ぞ、シブリール。そなたが知らぬこともあるということだ」
面白くないのかシブリールさんが黙る。
「じゃ、じゃあその方に頼めば、私たちを離してもらえるんですね」
「ああ。優しい奴だ。無下にすることはない。――ただ、問題があってな」
「問題?」
珍しく困ったかのようにラグナロク様がお茶を飲む。
「ふむ、最近そやつから絶縁状を叩きつけられたのだ」