ちゆまど―世界は全て君のために―


「救えって……俺には守ることしかできない……」


力で守ることしか不器用な彼にはできなかった。


救い方なんて知らない。


こんな陰惨な過去を持つ人をどうしたら救えるのだろうか。


眠るユリウスの手を握った。


「頼むから、起きてくれ……」


泣きたいほどだった。このまま目覚めないんじゃないかと恐怖が溢れる。


前は彼女が人形と化してもいいと思った。

愛する形は変わらない、でも。


「また、俺の名前を呼んでよ……」


なんと寂しいことか。


人形を愛でるだけでは満足できない。


話してほしい、甘えてほしい、癒してほしい。


話したいから、甘えたいから、癒したいから。


「ユリウス……」


神様がいないことなど知っている。何せ、神様は彼自身が――


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