ちゆまど―世界は全て君のために―
「ん……」
「ユリウス……!」
ユリウスが目を開いた。
「シブリール、さん……」
「良かった!」
はしゃぐ子供のようにシブリールはユリウスに抱きついた。
いつもなら突き放されるが、今に限ってユリウスはなにもしない。
彼女もまた、誰かの温もりが欲しかったのだ。
「シブリールさん、私……思い出したことがあるんです」
「……うん」
「私には、兄がいました」
思い出を語るユリウスは弱々しかった。記憶を取り戻し、精神的にダメージを受けたのだろう。
「兄は私の大切な家族でした。……けど、ある日」
きゅっ、とシブリールの体を抱く。
「兄は両親を殺しました。私も殺されかけたのに、なぜか生き残って……」