ちゆまど―世界は全て君のために―
「うん……」
「あの時、私は兄を止められなかった。しかもか、忘れようとした、全部、夢にしたいって思って……」
シブリールは耳を傾けるだけだった。話しやすかっただろう、ユリウスにとって。
「全部、思い出しました……!私は兄を止められず、自分かわいさから、両親をむざむざ……っ」
「ユリウスのせいじゃないよ、それは」
耳を傾けるだけだったがシブリールだが、聞き逃せないことがあった。
「小さなユリウスがそんな選択をしてくれて、俺は感謝している。もし止めに行ったら、殺されていたかもしれないからね」
彼女の頭を撫でながら、シブリールは君のせいじゃないと繰り返す。
「ユリウスが生きててくれて、両親だって安心しているはずだ。優しい両親だったんだろう?」