ちゆまど―世界は全て君のために―
「ユリウスの兄は、東ベルク国の王を名乗っていた」
「兄が……」
「ここからは俺の推測が入るけど、王が変わってから――君の兄が王になってから戦争が絶え間なく続いているという。
アレは腹を常に空かせた獣だ。食材は人肉。戦争を起こすのは食料の貯蔵のためだろう」
「やはり、また人を食べていたんですね……」
「ラーニャを食べたそうだ。ラグナロク一座を狙っていたのは、魔導師が高級食材だから。それと今でも君を狙っている」
目を閉じそうになるが、現実逃避はいけないとシブリールさんと目を合わせた。
「次は俺の考えだ。奴を野放しにはしておけない。君を殺すのだから」
シブリールさんが私を抱き寄せる。こつんと胸板に頭が当たった。