ちゆまど―世界は全て君のために―
「君を守るのが俺の役目だ。失いたくない。アレが君を殺すというなら、アレを殺したいんだ」
シブリールさんの考えはもっともなものだった。
人食いライオンを野放しにできない以上、何らかの対処が必要。
隔離ができないなら、殺害だ。
兄を殺すにあたって罪悪感など芽生えないだろう。けど。
「私は……」
頷けなかったのは蘇った記憶のせいだった。
血の繋がりはなくてもたった一人の家族。優しくされた記憶ばかりがある。
「やはり、迷うの」
「……、はい」
「両親を殺した悪魔でも」
「……」
フラッシュバックした鮮血に頭を痛めるが、首を振る。
「それでも兄さんだから……」
『それでも、お前は――』