ちゆまど―世界は全て君のために―
「ふわあ、ダメだ、眠い。本来、俺って夜型だからさ。今の時間はぐっすり中なんだ。シィちゃんの声したから飛び起きたけど」
うーんと伸びをするシュヴァルツさん。確か、太陽が苦手なんだっけ。吸血鬼ならなんとなく頷ける。
「大丈夫ですか」
「んー、無理かも。頼みごとは日が落ちてからまた改めて話すよ。それまで……ああ、ここをまっすぐ行けば小さな村があるから、そこの宿屋で待ってて」
シュヴァルツさんが指差す方には確かに道らしきものがあった。
分かりましたと言えば、頷かれて、手を振られた。
じゃあね、と言った途端にどんな早業か、シュヴァルツさんは消えてしまった。
「嵐みたいな人だ」
「まったくだ」